歯の矯正・マウスピース型矯正は顎関節症が治る?悪影響?

アゴが痛い・開きにくい「顎関節症」とは

アゴが痛い・開きにくい「顎関節症」とは

顎関節症とは、顎の痛み、口を大きく開けられない、口を開ける・顎を動かすとカクカクといった音がするという状態を指します。また顎関節のズレが全身へと影響し、頭痛や肩こり、腰痛などの不定愁訴を引き起こすこともあります。
原因は多岐にわたり、「こうすれば治る」という治療法は確立されていないため、長く症状にお悩みの方が少なくありません。

顎関節症の3大症状

  • 顎が痛い
  • 口を大きく開けられない(開口障害)
  • 口を開ける・顎を動かすと音がする(関節雑音)

マウスピース矯正で顎関節症は治る?治らない?

顎関節症の症状が、インビザラインなどのマウスピース矯正、また歯その他矯正治療で軽減されることがあります。ただし、歯並び・咬み合わせによる原因を取り除くことはできますが、症状改善を目的とした治療ではありません。

歯列矯正で治るケース

歯列矯正で治るケース

噛み合わせの乱れ、歯ぎしり・食いしばりなどを原因として顎関節症を発症している場合には、マウスピース矯正を含めた矯正治療による改軽減されることがあります。
矯正治療では噛み合わせを考慮して歯並びを治療し、噛み合わせが改善されることで、歯ぎしり・食いしばりが軽減されるケースがあるためです。

歯列矯正では治らないケース

一方で、噛み合わせの乱れや歯ぎしり・食いしばり以外に原因がある顎関節症の場合や、顎関節の機能・形態に根本的な原因がある場合には、矯正治療による症状の改善はあまり期待できません。
生活習慣の乱れ(日常生活中の癖)、ストレス、外傷などを原因とする顎関節症です。

噛み合わせと顎関節症の関係

噛み合わせと顎関節症の関係

噛み合わせが良くないと、顎関節に偏った力がかかり、左右がアンバランスになります。これによって顎関節が正しく機能しなくなり、顎関節症を発症します。
もともと噛み合わせが良くないという人もいれば、被せ物の不適合など、後天的に噛み合わせが乱れるという人もいます。

顎関節症の原因は「噛み合わせ(不正咬合)」だけではありません

顎関節症は、さまざまな原因が複雑に絡み合い、発症しているケースが目立ちます。

歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしり・食いしばりをするとき、顎の筋肉は緊張状態にあります。これにより顎関節が障害され、さまざまな症状を引き起こすのです。
また、他の原因によって顎関節症になり、これが歯ぎしり・食いしばりを引き起こすこともあると言われています。

生活習慣

不良姿勢、左右どちらかに偏った咀嚼、頬杖、うつぶせ寝・横向き寝などの生活習慣が、顎関節に不正な力をかけ、顎関節症の原因になることがあります。

ストレス

仕事や家庭、学校などにおけるストレスが慢性化すると、顎関節まわりを含めた全身の筋肉に緊張を強いるため、顎関節症の原因の1つになると言われています。

ケガなどの外傷

頭部などの外傷によって顎関節や靭帯が障害され、顎関節症が引き起こされることがあります。

顎関節症を引き起こす悪い歯並び

顎関節症の原因の1つに、噛み合わせの乱れが挙げられることは先述した通りです。
では、噛み合わせが乱れていることの多い歯並びとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

オープンバイト(開咬)

オープンバイト(開咬)

上下の歯を自然に噛み合わせたときに、上の前歯と下の前歯の間に、縦方向の隙間がある状態を指します。
前歯が咬み合っていないために機能的な癖の誘導が行い難く、奥歯にばかり負担がかかり、また食事の際には強く噛む必要があるため、顎関節の障害を引き起こすものと考えられます。

ディープバイト(過蓋咬合)

ディープバイト(過蓋咬合)

いわゆる「噛み合わせが深い」状態です。上の歯列が、下の歯列に大きくかぶさっています。
こちらもオープンバイトと同様、前歯に噛み合う相手がないため、奥歯に過剰な負担がかかります。
また、下顎の前後・左右の水平方向の動きが制限されることなども重なり、顎関節症を引き起こす可能性が高くなります。

クロスバイト(交叉咬合)

クロスバイト(交叉咬合)

通常、上の歯は下の歯より少しだけ外側に位置します。クロスバイトでは、顎のズレなどによって、一部で下の歯の方が外側に出ている状態を指します。
左右で顎にかかる力に偏りが生じ、顎関節症を引き起こすことがあります。
自然に噛み合わせたとき、上の前歯2本の隙間と、下の前歯2本の隙間が一直線上にない場合には、クロスバイトが疑われます。

マウスピース矯正で顎関節症になる・悪化することはある?

もともと症状を持たれている方に、症状が現れることはありますが、正しい知識を持った歯科医師が、患者様のご協力を得ながら治療を行えば、まずそういったことはありません。当院では、噛み合わせの改善は当然のことながら、歯ぎしり・食いしばりがある方にはその改善を促しながら、矯正治療を行って参ります。どうぞ、安心してご相談ください。

顎関節症になる可能性がある原因

マウスピースの装着に慣れていない

マウスピースの装着に慣れておらず、正しく装着できない状態が放置されてしまうと、歯並びや噛み合わせが逆に悪化し、顎関節症が現れることがあります。

治療の過程による噛み合わせ

治療によって歯が動くと、それに合わせて噛み合わせも変化していきます。そのため、治療の途中経過として、一時的に噛み合わせが乱れ、顎関節の症状が現れることがあります。
その後、矯正治療のゴールに近づき、歯並び・噛み合わせが改善していけば、症状は治まります。

マウスピースの装着時間を守らない

マウスピース矯正では、その装置ごとに1日の装着時間が決められています(インビザラインなら20時間以上)。これを守らないと、噛み合わせが悪い状態が続き、場合によっては顎関節症の発症や悪化につながることがあります。

治療へのストレス

ワイヤー矯正ほどではありませんが、マウスピース矯正にストレスを感じる方もいらっしゃいます。過度のストレスは、顎関節の緊張、歯ぎしり・食いしばりなどを招き、顎関節症の原因になることがあります。
矯正治療以外のどのような治療にも言えることですが、メリット・デメリット、注意点などを十分に理解し、納得してから治療へと進むようにしましょう。「こんなデメリットもあるんだな」と理解しておくことで、そのデメリットが生じたときも、ストレスを感じにくくなります。

顎関節症でも歯列矯正・マウスピース矯正はできる?

顎の痛み、口を大きく開けられない、口を開ける・顎を動かすとカクカクといった音がするといった症状が認められる顎関節症の方でも、基本的にマウスピース矯正を含めた歯列矯正は可能です。
ただし、たとえば少し口を開くのにも強い痛みを伴ったり、少ししか開けられない方、歯列矯正が大きなストレスとなることが想定されるといった場合には、先にホームドクターや専門医による顎関節症の治療に集中する必要があります。
当院では、そういった場合に無理に歯列矯正を進めることはありません。正確な診断とアドバイスにより、患者様お一人おひとりにとって、お口全体の健康を取り戻すための、適切な治療を提案します。